転がる石、君に痛みが来る

バンド・ランタノイドの歌、ギター、結石担当佐々木によるブログ。

脆さを共有する

盆休み初日。全巻買わなきゃ、と思っていた「好きな子がめがねを忘れた」をf:id:sasakinaoto:20210812064120p:imagehttps://www.amazon.co.jp/dp/4757565313/ref=cm_sw_r_cp_awdb_imm_0SNMBHX83197KJZHT1EP

kindleで一気に買って読んだ。「青春だなぁ」で片付けられない小村くんと三重さん。早く付き合って欲しい、いや、いっそずっと付き合わないでほしいという小村くん的サムシング矛盾を胸に抱いたまま、最新刊の最終ページを閉じた。漫画は読みたい時に読めないと意味がないと思っているし、「やるべきことがいっぱいあるし、実は今読むべきではない」タイミングに読む漫画は最高だと思うタイプの人間なので、僕みたいな人間に電子書籍は、絶対に与えてはいけない。いくらでも、時間を無駄にできる。文明の利器、本当にありがとう。

「好きめが」の話に戻る。別段恋に限った話じゃなくて、お互いを慮って、それが互いに伝わっていて、(現実はそういうことばかりではないのだけれど)その美しさっていいなぁと思う。藤近さんは、小村くんと三重さんを描く内に、恋じゃなくて愛を描きたくなったのではないかと勝手に推察してる。実は最初からそうだったのかもしれない。小村くんを何かと頼ってしまって、自己嫌悪で泣いてしまう三重さんを励まそうと、小村くんが自分の気持ちを打ち明ける(告白じゃないけど告白みたいなもんだろ)4巻は、なんだろう、心がトキメキを通り越してしまった。イチローWBCで決勝タイムリー打ったとき以来の衝撃だった。僕のトキメキは、もうかれこれ10年くらい留守にしていた。つい先ほど、ノックしたら返事が返ってきたのだ。おかえり。

美しいものを目にすると、人は口数が少なくなるのかもしれない。口から想いが飛び出すことで、美しさが劣化するのが怖い、のかもしれない。でも、ブログなら書けるような気がして、筆を取った。この素晴らしい感情を忘れるのと、言語化して失われてしまうであろう美しさを天秤にかけて、僕は恐ろしく弱くて脆いので、忘れる前に文章に残すことを選んだ。そんな脆さもたまにはいい。そんな脆さを共有してくれる人もこの世にはきっといるはずで、小村くんにとって、三重さんにとって、お互いそうだったというだけの話だ。