その4「サラバ!」
2ndシングル2曲目。西加奈子さんの直木賞受賞作「サラバ!」を連想してくれた人もいた。小説としてはかなり長いが、この場でオススメしておく。
「サラバ!」は明確に「長い曲を作りたい」と思って色々と試行錯誤した。最初期はピロウズの「Fanny Banny」みたいな曲調で、デモを聴いた友達に一発で看破された。
その長さ故に気軽に演奏できないのがネックだが、セトリに組み込まれた時は思いっきり肩に力が入る。聴いた人を全員泣かすくらいの気持ちである。
Cメロで「たぶん きみは もう 忘れちゃうんだろう」「おじいちゃんの 細くなった腕も顔も」ってフレーズがあるが、ここは唯一実体験を元にしている。病院で寝たきりの、腕も顔も細くなったおじいちゃんの姿。
今の所忘れる気配は微塵もないが、でもそれもいつか忘れる日がくるはずなのが少し怖かったりもする。
ので、「忘れたんじゃなくて、未来に近づく分、過去と少しずつサラバするだけなんだよな」って。気持ちに折り合いをつけた。
井伏さんが「人生足別離」を「さよならだけが人生だ」と訳したように。
そのままの感情が歌に詰まっている……と思いたい。
さようなら、バイバイ、またね、などなどお別れの言葉はたくさんあるが、「サラバ!」を選んだのには「別れ」という事象にポジティブなイメージを重ねたかったからというのもある。
多分これから先二度と会うことがないと分かっていても、「サラバ!」ならあっけらかんとしていて、前向きに感じるのだと思う。
(次回、その5「オーキードーキー」に続く)