転がる石、君に痛みが来る

バンド・ランタノイドの歌、ギター、結石担当佐々木によるブログ。

ランタノイド配信全曲解説

  その1「とべとべろまんず」

 

「酒を一滴も飲めないヤツが酒を飲もうと歌っている」

と中学の同期からは随分いじられたこの曲。

ランタノイドもなんだかんだ結成から10年経っていて、(メンバーが変わっていたりもするけれど)

それこそこの曲ができた当時はバンドとしての活動が充実していなかった時期でもあった。

高校卒業して、「さあこれからバンドやるぞ!」

ってタイミングで、ギターとベースが抜けたり。だからもっぱら弾き語りで披露することの方が多かった。

ドラムの啓太郎と二人、カホンとアコギで何度もライブ出演したのもいい思い出である。

歌詞を見てもらえればわかる通り、この頃は時代と逆行したいとばかりずっと思っていて、

聴いていた曲も随分昔のものばかりだった。

聖子ちゃん、マッチ、ピンクレディー、およげたいやきくん……。そしてビートルズ、と。

「生まれる時代間違えたわ!」ってひたすら思っていたのだろう。

当時流行っていた音楽に魅力がなかった、惹かれなかったということなのかもしれない。

その良し悪しは別として。

今はヒットチャートがアイドルで埋もれることもなくなり、

好みのバンドもいっぱいでてきて、音楽の聴き方さえも変わってきた。

なけなしの1000円でアルバム5枚借りて、ソッコーでalneo(ビクターのポータブルオーディオプレイヤー)にぶちこんで、曲名が全部「???????????」でイライラしたり、そんなことがひたすら懐かしい。

その懐かしさを歌いたいのだ、と謎の使命感に駆られていたのかも。

好み1000%でつくられた従姉妹のMDとか。

中学の卒祭的なイベントで一緒にお笑いをやることになった相方から

ミスチル入門編!!」

って汚ねえ字で書かれた自作のCDをもらったりとか。

そういう誰にでもある懐かしさを歌いたいと思った時、

「とべとべろまんず」

というよくわからんポンコツみ溢れる単語が生まれたのであった。

発表した当時も、今もそうだが、ライブ後はおじさまおばさまに話しかけてもらえることが多い。

琴線に触れるのかもしれない。

稀に、めっちゃ若い子が「聖子ちゃん最高ですよね」とか言ってくれることもあるが、それも嬉しい。

自分も君のような時代があったのだ。そんでもってそれは間違ってはいないのだ、と思いながら話をする。

一回だけ、「2000年代って言ってたけど!君らいったいいくつなん!?」みたいに絡まれたこともある。

歌詞の流れ的にランタノイドが2000年代生まれのバンドだと勘違いされたのだ。

これはちょっと反省もした。言及されたのたぶん2015年とかの話だから、まあ、そりゃ不思議に思うよな。タバコ吸ってたし。

そんな勘違いもされつつ、この曲のレコーディングをきっかけに、閉塞気味だったバンドの活動も徐々に開けてきたようなイメージがある。

2015年12月に発売。元ギター清野、ベース小林と4人体制になってから初の音源だった。

鶴見トップス(現在はGIGS)の下にある小さなレコーディングブースで録音した。

アコギは自分のパートだったが今よりもずっと下手くそでリズムも取れていなかったので、元ギターの清野さんに全部弾いてもらった。

今もランタノイドの曲をミックスしてくれているエンジニア井垣さんの提案で、後送部分は各人がはちゃめちゃな単語を叫び、それを重ねてもらった。

色んな偶然も手伝って、ランタノイドの中でも一際印象深い一曲となったのであった。

 

(次回、その2「夏が来る」に続く)